第1回 デジタル・メディア


<参考ページ>

歴史
Design By Numbers
序文より

ニューヨーク近代美術館MoMa(http://www.moma.org/
学芸員
Paola Antonelli(パラオ・アントネッリ)

デスクトップコンピュータがアートやデザインの創作現場に入り込んできたのは15年ほど前だったと思います。とても新鮮で魅力的に見えたこのメディアには、しかしながら多くの試練が待っていました。芸術の世界にあっては、メディアはその作品の姿を変えさせるだけではなく創作のプロセスにも影響を及ぼすのです。革新をもたらすものは常にそのようなのですが、コンピュータも多くの批判を招きました。それは、カット・アンド・ペーストや行き当たりばったりの試行錯誤のような安易な習慣に流されるため、きびしい修練がおろそかになるというものでした。試してみればすぐに結果が見られるという魅力が、未熟なテクノロジーには特に必要な注意深い検討の機会を奪ってしまいました。コンピュータのおかげで、コピーライターはコンセプトを思い付くまま書き留め、デザイナーは明快なアイデアをもたずに無雑作に視覚要素の断片をためておき、仕上げの土壇場になってそれらのテキストとビジュアルを配置調整して完成というようなことが可能になってしまいました。技術によってもたらされた時間効率のよさばかり目立ち、テキスト、イメージ、作品が力を失って、つまりは鋭さや厳格さが希薄な世界を産み出すだけだと片付けられたのです。

特にグラフィック・デザイン界でコンピュータが引き起こした波乱のインパクトは、急激でとつもなく大きいものでした。摩擦がまたたく間に生じ、議論がわき起こりました。コンピュータに与しない側には、練達のモダニズムの旗手がいました。ポール・ランドやマッシモ・ベィネリらです。反対側には、エミグレロやレーヌ・ワイルドのような、若輩ながら腕に自信があり、新しいメディアを開拓しながら使いこなす才能のあるデザイナーやオピニオン・リーダーが対峙しました。ポストモダンの柔軟さを身に付け、かかでも才能に恵まれた彼らは、プロセスと目的を明快にするモダンデザインのよい面を踏み台に、最も現代的なビジュアル文化を築いていました。モダンデザインの作品は、その機能と形態に制作のプロセスを見せています。しかしその作品のありようは、特定のプロセスが決定しているわけではなく、種々のプロセスの使い方がそうさせているのです。この特徴をモダンデザインの定義とするならば、モダンデザインは、時代に限定されず、またスタイルとも関係のないものとなり、古代ギリシャ、1938年、そして今日にも、それぞれに見いだすことができると言えます。

(以下省略)


芸術分野でのコンピュータの役割
  ・作業の効率化
  ・新しい造形表現

デジタルイメージの制作



造形表現
  ・点による表現
  ・線による表現
  ・数式による表現

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