この突然の変化を機に、コンピュータを伝統的なデザイン教育に取り込む試みが成されたが、いわば水と油を混ぜるようなものであった。
(中略)
無数の若いデザイナーが、私に同じ質問を問いかけてくることがそれを裏付ける。「どうやってプログラミングを勉強したらいいのですか?」これに対する適切な答えは、画家が「どうやったらうまく描けるようになれるのですか?」と聞かれた時のものと同じだということにようやくごく最近になって気がついた。「うんと練習しないといけない。そして何より生まれつきの素質が大事だ」。この答えに大抵の人はけげんな顔をする。
(中略)
Photoshopがどのように動いているかわかったからといって、デザイン・コンペで賞を獲得できるようになるわけでない。だが、本書の目的はまた、読者に特定のツールを開発したり真似をしたりするようになってもらうことでもない。本書を読み終わるころには、コンピュータ・メディアから人間が作り上げることができるものの可能性が見えてくるようになっていると思う。基本的なスキルを身に付けたならば、はやりのツールによって固定化されてしまっているデジタル・メディア・デザインのパラダイムを突き破るような、先端のコンセプトを探ることができるかもしれない。獲得したスキルをもってさらに各自のクリエイティビティを羽ばたかせれば、デジタル・メディアの真価を引き出すような独自の実験研究や作品に到達できるだろう。