AKIBI plus + 五城目
今と昔を繋ぐアート
 平成28年度の成果展では、町にあふれる、しかし魅力的な「言葉」をフィールドワークにより収集し、展示を試みました。五城目エリアでは今年度も引き続き、参加者による聞き書きとリサーチを軸にプログラムを展開します。参加者にとって身近な「芸術資源」を身近な手法により引き出し、異なる観点や思考を共有します。
 本企画では「芸術資源」を「日々の暮らしで発揮されている表現」とし、町に暮らす住民たち自身の手でいかに可能性を紡ぐことができるか、を試みることにしました。自ら畑を耕して作物を得るように、芸術の自給率向上を目指します。
<見つける、記録する>
9.30(土) 9:00–15:00
畠山鶴松の落書き
小松和彦(小松クラフトスペース)
服部浩之(キュレーター・秋田公立美術大学准教授)
石倉敏明(人類学者・秋田公立美術大学准教授)
 昨年度の講座で、小松さんは、20世紀はじめに“落書き”を残した畠山鶴松翁について、考古学や工芸研究の視点から発表してくださいました。今年は畠山鶴松の息子さんのお宅へ伺い、実際の資料を拝見させていただくことで、こうした資料に込められた「現在性」(*子孫、未来に残す記録としての面白さ、人物的な魅力など)について、さらに深く学びます。


▶︎ Column by yukariRo

<ゆさぶる、つなぐ>
10.14(土) 9:00–15:00
*きのこ祭り前日
大人のなべっこ遠足
北島弘宇(北宇商店)
石倉敏明(人類学者・秋田公立美術大学准教授)
  町の郷土料理であるだまこ鍋。庭で飼っている鶏、山でとってくるきのこ、畑で育てたごぼうなどの根菜と、在来種の小倉せりと、景色にあるものでできるのが郷土料理です。小学校での伝統行事「なべっこ遠足」は大人にとって忘れられないイベント。「なべっこ遠足」は、少人数のグループに分かれて屋外で料理をつくる、全学年・全児童参加の課外授業のことです。
 みのまわりのもので作り上げ、集まって食べることで、人と人、人と食べ物、人と地域を繋げてきた「なべっこ遠足」。景色と食べ物の繋がりや集まって食べることの意味、味による継承について考えます。


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<ゆさぶる>
10.22(日) 9:00–15:00
「小さな問題」から
捉える朝市

UMMM(デザイナー・京都造形芸術大学非常勤講師)
佐藤 稔(秋田大学名誉教授)
山本太郎(ニッポン画家・秋田公立美術大学准教授)
 500年続く朝市の出店者は減少を続けており継続をどうするか議論が求められています。そのような“大きな問題”に対して、身近な疑問や違和感など“小さな問題”から考える取り組みを実施します。出店している人や商品、遊びにきている人や、朝市通りにあるお店へインタビューを行いつつ、朝市で見つけた“小さな問題”を集めていきます。
 朝市近くに在住で五城目の歴史に詳しい秋田大学名誉教授の佐藤稔先生に町の歴史を写真などの資料をもとにお話いただき、記録を残していく意味やこれからの朝市の残し方について考えます。


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<ゆさぶる>
11.5(日) 9:00–15:00
森を学び、木を食べる
三浦 豊(森の案内人)
皆川嘉博(彫刻家・秋田公立美術大学准教授)
 昨年度のAKIBI plusでは、現在は廃村となった集落の跡地を歩き、林業家の畑澤與左右衛門さんに当時の暮らしを教えていただきました。ブランドとしての「秋田杉」は全国的に有名ですが、秋田の山々や森林について理解している方は少ないかもしれません。本プログラムでは、日本中の森を歩き続け、森の生態についてお話している三浦豊さんをお招きし、身近な里山を歩きながら「森の見方」を体得していきます。また、視覚、触覚、聴覚だけでなく、味覚という新たな感覚を開くきっかけとして、じっさいに「木を食べて」みたいと思います。



<価値を作る>
11.11(土) 9:00–15:00
五城目を博物館に
見立てるなら

浅利絵里子(秋田県立博物館)
藤 浩志(美術家・秋田公立美術大学副学長)
 五城目には多くの文化財があり、公共施設から家庭までそれぞれの場所で保管されています。意外に身近な文化財の価値を、将来世代に繋いでいくのにどんな方法が考えられるでしょうか。  ゲストに学芸員である浅利さんをお招きし、博物館での取り組みを伺い、展示や企画展の作り方など、文化財などの価値の伝え方についてお話いただきます。名も無い価値あるものをいかに発見し、評価をお金だけではなく、その価値を理解するための議論を重ねていくかを考えていきます。


AKIBI plus + 五城目 企画展
ど思ったば、カケラだった
2018 1 11 日(木)〜 1 28 日(日)
午前10時〜午後7時 入場無料
※11、12日は公開設営・最終日午後5時まで


「あなたにとって未来に
 残したいものはなんですか?」

VHS、カセットテープ、フィルムカメラ。今の大学生に言っても通じない、私が使っていたものたち。50年先に生きる人たちに、今日使っている道具を残して意味があるのか不安になる。町の歴史を伝えるために残すものを探そうとしてなにを見つければいいのか。

同じことを50年前に思った人がこの町にいる。“わが村の落書”を描いた畠山鶴松翁だ。1895年に生まれ、明治・大正・昭和の荒波を乗り越え、昭和42年ごろから大学ノートとスケッチブックに暮らしの記録を残してきた。

誰かに読んでもらうために書いたのではない。自分と息子、孫、そして家族が大いに笑って和を得ることを望んだ。名誉やお金のためでなく、消え行く暮らし、手にかけて実際に行ってきたことを、忘れ去られないように書き留めた。

“しどろもどろの事を書いて、昔と現在を比較してみる事もひとつの学びであろう。”と鶴松翁は言った。私たちも今も残る町のことに手をかけてみた。大人のなべっこ遠足、「小さな問題」から捉える朝市、森を学び木を食べる、五城目町を博物館に見立てるなら。よそ者の眼で町を見て飛び込んできたものは、町の記憶のカケラとしてポロポロと手に輝きと共に落ちてきた。

本展では、町の暮らしに見つけた芸術資源の展示と、朝市の芸術ガイドツアーを通して、未来の文化財を探します。鶴松がボールペンで描いたように、皆様が見つけたカケラを落書きしてできあがる、ノートのような展示です。

50年先を生きる人たちへ、私たちが残せることを描き、鶴松と同じく大いに笑って喜んでもらいませんか。私たちが生きる今、未来の人が見る昔、それを比較してみることもひとつの学びなはず。


会場:ものかたり
秋田県南秋田郡五城目町字上町39
tel.018-802-0089 http://www.mono-katari.jp
[企画]

柳澤龍(シェアビレッジ御庭番)
小熊隆博(ギャラリーものかたり代表)

member
宮本しおり
正保千春
宮原葉月
宮田優子
原田萌々
柏木 心
松山さくら
眞崎愛望

Special supporters
尾花賢一(秋田公立美術大学助手)
福永竜也(秋田公立美術大学助手)

Column
三谷葵(ユカリロ)

Illustration
渡邉幸穂(ギャラリーものかたり)

Photograph
高橋希(ユカリロ)

Art Direction
UMMM

AKIBI plusについて
AKIBI plus は、秋田公立美術大学が、秋田県内の四つの地域と連携して実施するアートマネジメント人材育成プログラムです。
秋田でアートの土壌を育むため、いま求められているのは、地域とアートの「つなぎ手」となる人材です。ローカルメディアと協働しながらその人材を育成するAKIBI plus 2017 では、秋田のアートを「辺境芸術」と銘打ち、地域の魅力を掘り起こす、独自のプログラムを実践していきます。他の地域のプログラムに関してはHPをご覧ください。