2016.03.25 UPDATE
概要
農民彫刻家として知られる皆川嘉左エ門氏が手がける県南の神社、道祖神などを見学しながら生活と芸術を結ぶ地域課題を考えました。
いま、アートの魅力や楽しさを人々に発信する「つなぎ手」として、心豊かな創造性の活性化を担い、地域の文化を向上させる人材が求められている。そのような人材からこれまでの地域の活動を聞き、地域課題を研究する。 以上にあてはまる人物として、農民彫刻家:皆川嘉左エ門氏の創作活動を紹介したい。
皆川嘉左エ門氏は1960年に県立増田高等学校農業科卒業後、誰に師事されることなく、我流で彫刻を造り続けてきた。1979年に「農民彫刻家」としてNHKテレビ「新日本紀行」で紹介されると全国的に注目を集めた。その制作拠点を一貫して生家:十文字町に置き、現在まで精力的に活動してきた。その創作活動は絶えず地域に刺激を与え、活性化させ続けている。県南バスツアーとして、氏のアトリエを訪ね、地域に根ざした創作活動を自身からご紹介いただき、地域の文化の向上へのヒントを探り、研究する。
地域課題として嘉左エ門氏が真っ先に上げたのが「政府の減反政策の方向転換により、いっそう米価が下がる。これから百姓は益々大変だ。」という政府の農業政策への懸念の声であった。氏が彫刻家である前になによりも“農民”としての声が真っ先に聞かれた。現在は十文字町芸術協会の会長として地域の文化をリードしているわけであるが現在の状況、今後の展開などについて聞いた。
「十文字町芸術協会の作品発表会を8月に横手市駅前の交流センター:Y2(わいわい)ぷらざで開催した。毎年、十文字町駅前のコミュニティハウス:ね・ま〜れで開催しているのだが今回はより広域に十文字町の文化芸術を皆さんに見てもらうために開催し、大変な講評を得た。11月には十文字町のね・ま〜れでも展示をする。協会会員は高齢者が中心で若い人が少く、ここも大きな問題だ。また趣味的な会員が多い。若い人は現在の生活のために働かねばならず、作品を造っている、余裕や時間がない。協会としても若い芸術を目指す人を応援し、支えになってあげたい。」
いわゆる後継者不足は十文字地域でも深刻な問題であり、現在秋田で働く若い人々の生活環境が向上しなくては、芸術活動に向かう時間も気力もなくなる。
嘉左エ門氏も高校卒業後、彫刻を始めたわけだが、これは誰から教わるわけでもなく我流で現在まで制作活動を続けている。嘉左エ門氏の若い当時は現在の日本社会とは比べ物にならない程、社会全体が困窮していた。その嘉左エ門氏が、その貧しく若い時分に、なぜ彫刻を彫り続けることができたのか。このきっかけやエピソードを知ることによって、現在の若者がアートに向かい、生き延びて行く糧を知るきっかけになるのではないか。そういうこと期待し、今回のツアーでなにがしかの答えを見つけたい。
文責:秋田公立美術大学 准教授 皆川嘉博
形式 ワークショップ型レクチャー
開催日時 2015年10月18日(日)
会場 秋田県南地域一帯
講師/制作者
皆川 嘉左エ門(農民彫刻家)
皆川 嘉博(秋田公立美術大学准教授)
*写真は皆川 嘉左エ門氏
内容
募集要項
主催
文化庁、秋田公立美術大学