秋田公立美術大学卒業・修了展2025

「かけて、たして、ひいて、わって」

「表現に節目はあっても限りはない」という意味から「かける、

たす、ひく、わるを記号のみならず色々な意味に捉えることが

できる」という想いを込めて全てひらがなにしています。また、

記号を破くことで、型にとらわれず自由に制作をしてきた

制作者たちの様子を表現しました。

 

 

 

 

秋田公立美術大学卒業・修了展2025

【開催日時】令和7年2月13日(木)〜2月17日(月) 10:00〜18:00(最終入館17:30まで)
※初日のみ開始時刻13:00から ※最終日のみ最終入館16:30まで

【開催場所】秋田県立美術館 1階県民ギャラリー(〒010-0001秋田県秋田市中通1丁目4-2)
秋田市にぎわい交流館AU(〒010-0001秋田県秋田市中通1丁目4-1)
秋田市文化創造館(〒010-0875 秋田県秋田市千秋明徳町3-16)
秋田公立美術大学サテライトセンター(〒010-0001 秋田県秋田市中通2丁目8-1)

 

【主  催】秋田公立美術大学卒業・修了展2025実行委員会/秋田公立美術大学

 


~ 受賞作品 ~


  • <p>学長賞 / 霧ト</p>
<p>吉田 留美夏 Rumina Yoshida<br />
(コミュニケーションデザイン専攻)</p>
<p>タイトル『霧ト(ムト)』とは、「霧都」「霧と」の意味の間を往復する。複数のカットに前後関係はなく、ストーリーではなく場や存在を表現する。登場する空気や人物は、湿度と同時に冷気を含んでいるようにみえる。デジタル表現全盛の中、紙と鉛筆のストロークにこだわる表現は、あたかも秋田の湿度と冷気を呼吸しているかのようである。作者本人が知らぬ間に秋田の空気は身体に染み込んでいるのである。</p>

    学長賞 / 霧ト

    吉田 留美夏 Rumina Yoshida
    (コミュニケーションデザイン専攻)

    タイトル『霧ト(ムト)』とは、「霧都」「霧と」の意味の間を往復する。複数のカットに前後関係はなく、ストーリーではなく場や存在を表現する。登場する空気や人物は、湿度と同時に冷気を含んでいるようにみえる。デジタル表現全盛の中、紙と鉛筆のストロークにこだわる表現は、あたかも秋田の湿度と冷気を呼吸しているかのようである。作者本人が知らぬ間に秋田の空気は身体に染み込んでいるのである。

  • <p>複合芸術研究賞 / 日本文化と植物学における苔の新しい表象――苔の美学に向けて</p>
<p>羅 雪薇 Luo Wuewei<br />
(大学院複合芸術研究科 修士課程)</p>
<p>コンクリートの隙間、排水溝の縁、電柱の下。苔は至る所に存在している。ところが私たちは普段この微小な生物に着目することが少ない。一方で、実は和歌には、苔を詠み込んだものが膨大にある。著者は、それらを「苔言葉データベース」として網羅・整理し、古来日本人が抱いてきた死生観や時間観そして美意識を綿密に分析した。このデータベースはまさに唯一無二の研究成果であり、今後さまざまな分野で応用されることであろう。私たちの心の古層に刻まれた美的感覚を呼び起こすと同時に、苔の未来への応用可能性を示す非常に優れた論文である。</p>

    複合芸術研究賞 / 日本文化と植物学における苔の新しい表象――苔の美学に向けて

    羅 雪薇 Luo Wuewei
    (大学院複合芸術研究科 修士課程)

    コンクリートの隙間、排水溝の縁、電柱の下。苔は至る所に存在している。ところが私たちは普段この微小な生物に着目することが少ない。一方で、実は和歌には、苔を詠み込んだものが膨大にある。著者は、それらを「苔言葉データベース」として網羅・整理し、古来日本人が抱いてきた死生観や時間観そして美意識を綿密に分析した。このデータベースはまさに唯一無二の研究成果であり、今後さまざまな分野で応用されることであろう。私たちの心の古層に刻まれた美的感覚を呼び起こすと同時に、苔の未来への応用可能性を示す非常に優れた論文である。

  • <p>複合芸術研究賞 / ≪交換日記 ser.≫における肖像画制作論  自他境界によるリアリティの考察</p>
<p>飯島 小雪 Koyuki Iijima<br />
(大学院複合芸術研究科  修士課程)</p>
<p>本研究の着想の原点はあのパンデミックにある。非対面でのコミュニケーションを余儀なくされながら学部時代を過ごした作者は、その断絶と距離に新たな肖像画の可能性を見出した。遠く離れた見知らぬ相手と交換日記を交わし、受け取った極私的なことばを手がかりに、作者は視えない相手の輪郭を探っていく。複雑な工程と長い時を経てどうにか描き出されたその像は、一人称、二人称、三人称という概念区分を超えた不定称の肖像として現前し、私たちの自他境界に揺さぶりをかける。実制作と論考を両輪に、絵画という古典的な表現形態を複合芸術と呼ぶべき域に至らしめた。</p>

    複合芸術研究賞 / ≪交換日記 ser.≫における肖像画制作論  自他境界によるリアリティの考察

    飯島 小雪 Koyuki Iijima
    (大学院複合芸術研究科 修士課程)

    本研究の着想の原点はあのパンデミックにある。非対面でのコミュニケーションを余儀なくされながら学部時代を過ごした作者は、その断絶と距離に新たな肖像画の可能性を見出した。遠く離れた見知らぬ相手と交換日記を交わし、受け取った極私的なことばを手がかりに、作者は視えない相手の輪郭を探っていく。複雑な工程と長い時を経てどうにか描き出されたその像は、一人称、二人称、三人称という概念区分を超えた不定称の肖像として現前し、私たちの自他境界に揺さぶりをかける。実制作と論考を両輪に、絵画という古典的な表現形態を複合芸術と呼ぶべき域に至らしめた。

  • <p>学長奨励賞 / I Am More ―数百年の沈黙を破る</p>
<p>徐 津君 Xu Jinjun<br />
(アーツ&ルーツ専攻)</p>
<p>作者はみずからのルーツを辿り直す調査の過程で、中国の実家に残された古い家系図と出会う。「数百年」の歴史を刻むその族譜には、男性の名前だけが記載されていた。古くからの男系継承の慣習により、女性たちの固有名は一族の歴史から抹消されてきたのである。作者は、写真表現によって、この「数百年の沈黙」を破る。作者は、11名の現存する女性親族の声を聞き、肖像写真を撮影することによって自身に連なる歴史を再系譜化した。作者の表現は、こうして「私」に連なる血脈を越えた普遍性に到達する。それは、世界の歴史を生み出してきた女性たちの声と身体、生命、魂の歴史を召喚する繊細で力強い表現に結実した。</p>

    学長奨励賞 / I Am More ―数百年の沈黙を破る

    徐 津君 Xu Jinjun
    (アーツ&ルーツ専攻)

    作者はみずからのルーツを辿り直す調査の過程で、中国の実家に残された古い家系図と出会う。「数百年」の歴史を刻むその族譜には、男性の名前だけが記載されていた。古くからの男系継承の慣習により、女性たちの固有名は一族の歴史から抹消されてきたのである。作者は、写真表現によって、この「数百年の沈黙」を破る。作者は、11名の現存する女性親族の声を聞き、肖像写真を撮影することによって自身に連なる歴史を再系譜化した。作者の表現は、こうして「私」に連なる血脈を越えた普遍性に到達する。それは、世界の歴史を生み出してきた女性たちの声と身体、生命、魂の歴史を召喚する繊細で力強い表現に結実した。

  • <p>第11回きらり!早瀬眞理子奨励賞 / みつ</p>
<p>清野 こはる Koharu Kiyono<br />
(ものづくりデザイン専攻)</p>
<p>織物は経糸と緯糸が交差することによって一枚の布となる。作者は数ある織組織の中でも波打つような織紋様が特徴の蜂巣織に惹かれた。独自の色彩感覚と緻密な計画によって染め上げられた糸を用いてこの織組織と組み合わせたことで平面でありながら奥行きのある魅力的な作品となった。しかし特筆すべき点は他にもある。緯糸を規則的かつ一定の幅に打込み織ることがどれほど高度な技術を必要とするか、一度経験した者であれば十分に理解できるだろう。半年という短期間で習得したこの技術と作者の制作に対する熱意と集中力は評価に値するものである。この経験が卒業後に就く京都西陣織の世界で生かされ活躍することを期待する。</p>

    第11回きらり!早瀬眞理子奨励賞 / みつ

    清野 こはる Koharu Kiyono
    (ものづくりデザイン専攻)

    織物は経糸と緯糸が交差することによって一枚の布となる。作者は数ある織組織の中でも波打つような織紋様が特徴の蜂巣織に惹かれた。独自の色彩感覚と緻密な計画によって染め上げられた糸を用いてこの織組織と組み合わせたことで平面でありながら奥行きのある魅力的な作品となった。しかし特筆すべき点は他にもある。緯糸を規則的かつ一定の幅に打込み織ることがどれほど高度な技術を必要とするか、一度経験した者であれば十分に理解できるだろう。半年という短期間で習得したこの技術と作者の制作に対する熱意と集中力は評価に値するものである。この経験が卒業後に就く京都西陣織の世界で生かされ活躍することを期待する。

  • <p>秋田市長特別賞 / Fulcrum Chair</p>
<p>織笠 由瑚 Yugo Orikasa<br />
(ものづくりデザイン専攻)</p>
<p>ロッキングチェアという領域において、その揺れ方向は前後への動きが基本であり僅かながら横方向の揺れを持つものも存在するが、本提案は水平円運動に縦軸のモーメントを組み合わせることで3次元方向に揺れる構造を生み出している。日本の居住空間に合わせてフルアームでありながらコンパクトに揺れること目指しつつ、結果的に椅子の歴史において無数の構造が存在するなかでこの度の構造に辿り着いたことは驚くべき事実である。世界にむけて発信力を持ったプロダクトが本学から生まれたことに対して作者のこれからの活躍に大きく期待する。</p>

    秋田市長特別賞 / Fulcrum Chair

    織笠 由瑚 Yugo Orikasa
    (ものづくりデザイン専攻)

    ロッキングチェアという領域において、その揺れ方向は前後への動きが基本であり僅かながら横方向の揺れを持つものも存在するが、本提案は水平円運動に縦軸のモーメントを組み合わせることで3次元方向に揺れる構造を生み出している。日本の居住空間に合わせてフルアームでありながらコンパクトに揺れること目指しつつ、結果的に椅子の歴史において無数の構造が存在するなかでこの度の構造に辿り着いたことは驚くべき事実である。世界にむけて発信力を持ったプロダクトが本学から生まれたことに対して作者のこれからの活躍に大きく期待する。

  • 秋田県立美術館館長賞 / 記憶のプラットホーム「湯沢大堰」もてなしのまち

    長谷川 由美 Yumi Hasegawa
    (景観デザイン専攻)

    あまりに多義的な言葉となった「まちづくり」と真摯に向き合った作品である。偶発性を多分に含むまちづくりを"計画"ではなく、日常生活の延長線に生まれるアクティビティを連鎖的につなぐ"ものがたり"によって漸進的に進めようとする点が高く評価される。既に地元住民を巻き込んだ活動に着手するなど、現場に身を置き、絶えずまちづくりの"ものがたり"を更新し続けようとするラディカルな姿勢は、「まちづくりに貢献」することを理念に掲げる本学に重い問いを投げかけている。

  • <p>秋田魁新報社特別賞 / コーヒー豆と海</p>
<p>伊奈 春希 Haruki Ina<br />
(景観デザイン専攻)</p>
<p>秋田市山王で2021年に閉店した「和蘭豆」という小さな喫茶店に宿る記憶についてのインスタレーション。作者が「和蘭豆」の店主のもとを訪れ行った聞き取りの成果としての膨大なテキストが本作に大きなインスピレーションを与えた。「和蘭豆」のささやかな日常の記憶を辿ることは、すなわち秋田市山王という固有の場所についての探究であり、同時にコーヒー豆をめぐる資本主義的な社会システムと向き合うことでもある。その記憶の深淵に足を踏み入れながら、一見無関係な若者たちの声を介入させることで、日常の記憶についての継承の可能性に迫っている。希望に満ちた快作である。</p>

    秋田魁新報社特別賞 / コーヒー豆と海

    伊奈 春希 Haruki Ina
    (景観デザイン専攻)

    秋田市山王で2021年に閉店した「和蘭豆」という小さな喫茶店に宿る記憶についてのインスタレーション。作者が「和蘭豆」の店主のもとを訪れ行った聞き取りの成果としての膨大なテキストが本作に大きなインスピレーションを与えた。「和蘭豆」のささやかな日常の記憶を辿ることは、すなわち秋田市山王という固有の場所についての探究であり、同時にコーヒー豆をめぐる資本主義的な社会システムと向き合うことでもある。その記憶の深淵に足を踏み入れながら、一見無関係な若者たちの声を介入させることで、日常の記憶についての継承の可能性に迫っている。希望に満ちた快作である。

  • <p>ABS秋田放送特別賞 / 半魚人と2本の長いツノが生えた天使との邂逅</p>
<p>岩田 沙久良 Sakura Iwata<br />
(ビジュアルアーツ専攻)</p>
<p>動物実験や品種改良についてのリサーチから生まれた「半魚人」というキャラクターは、人間が人魚を作るために作り出された生物として生まれ、実験の失敗作として捨てられたという。本作では海岸に打ち上げられた半魚人は海洋ゴミにまみれて描かれている。その他にも破損した漁網や不発弾が入り混じり、どれも人間によって無責任に廃棄され、長い漂流を経て海岸へと辿り着いたものだ。愛らしい表情で手を差し伸べる半魚人の指先にはフナムシがいるが、フナムシは魚の死骸を餌にする。本作品は人間が無作為に刈り取ってきた生命の表現に挑んでいる。愛嬌のあるキャラクターを介して、私たちに目を逸らしたい現実を突きつける作品として昇華させた。</p>

    ABS秋田放送特別賞 / 半魚人と2本の長いツノが生えた天使との邂逅

    岩田 沙久良 Sakura Iwata
    (ビジュアルアーツ専攻)

    動物実験や品種改良についてのリサーチから生まれた「半魚人」というキャラクターは、人間が人魚を作るために作り出された生物として生まれ、実験の失敗作として捨てられたという。本作では海岸に打ち上げられた半魚人は海洋ゴミにまみれて描かれている。その他にも破損した漁網や不発弾が入り混じり、どれも人間によって無責任に廃棄され、長い漂流を経て海岸へと辿り着いたものだ。愛らしい表情で手を差し伸べる半魚人の指先にはフナムシがいるが、フナムシは魚の死骸を餌にする。本作品は人間が無作為に刈り取ってきた生命の表現に挑んでいる。愛嬌のあるキャラクターを介して、私たちに目を逸らしたい現実を突きつける作品として昇華させた。

  • <p>AKT秋田テレビ特別賞 / ふれつづけている。</p>
<p>廣田 瑚斗美 Kotomi Hirota<br />
(アーツ&ルーツ専攻)</p>
<p>行き場をなくしたモノ(人工物)たちに自分はどのように近づくことができるか。それらは分解されることなく残留する。作者は、そこに計り知れない人間の業(ごう)とやるせなさを感じた。そして、水辺に流れ着いたプラスチック製品の残骸に、ひたすら古布を細かく裂いて繊維状にした「わた」を、一針一針刺していった。その時生じる音と残骸の触感を確かめながら。気の遠くなるような作業の中で、次第に「わた」は作者とモノとを深くつなぐ媒体となり、そのモノは温かさを持ち始めた。廃棄されたモノが経てきた時間と、作者の丁寧な作業の重なり合いは、鑑賞者に不思議なリズムを感じさせるだろう。</p>

    AKT秋田テレビ特別賞 / ふれつづけている。

    廣田 瑚斗美 Kotomi Hirota
    (アーツ&ルーツ専攻)

    行き場をなくしたモノ(人工物)たちに自分はどのように近づくことができるか。それらは分解されることなく残留する。作者は、そこに計り知れない人間の業(ごう)とやるせなさを感じた。そして、水辺に流れ着いたプラスチック製品の残骸に、ひたすら古布を細かく裂いて繊維状にした「わた」を、一針一針刺していった。その時生じる音と残骸の触感を確かめながら。気の遠くなるような作業の中で、次第に「わた」は作者とモノとを深くつなぐ媒体となり、そのモノは温かさを持ち始めた。廃棄されたモノが経てきた時間と、作者の丁寧な作業の重なり合いは、鑑賞者に不思議なリズムを感じさせるだろう。

  • <p>AAB秋田朝日放送特別賞 / 恐怖症つーしん</p>
<p>小濱 百花 Momoka Obama<br />
(コミュニケーションデザイン専攻)</p>
<p>感情的な症状について子供に理解しやすく可視化するという難題に挑戦した力作である。日常生活に潜むさまざまな症状を色鮮やかに図説する作画表現の魅力に加えて、興味を持って読み進められる構成力は極めて高いものといえる。また、冊子内のクイズ的探し絵を、展示においては実際に手で触れて動かしながら理解を促す仕組みに改めるなど、表現形式に応じてコミュニケーションを円滑に成す工夫が施されており、作者のデザイン力の高さが大いに評価されるものである。</p>

    AAB秋田朝日放送特別賞 / 恐怖症つーしん

    小濱 百花 Momoka Obama
    (コミュニケーションデザイン専攻)

    感情的な症状について子供に理解しやすく可視化するという難題に挑戦した力作である。日常生活に潜むさまざまな症状を色鮮やかに図説する作画表現の魅力に加えて、興味を持って読み進められる構成力は極めて高いものといえる。また、冊子内のクイズ的探し絵を、展示においては実際に手で触れて動かしながら理解を促す仕組みに改めるなど、表現形式に応じてコミュニケーションを円滑に成す工夫が施されており、作者のデザイン力の高さが大いに評価されるものである。

  • <p>CNA秋田ケーブルテレビ特別賞 / 20×20</p>
<p>滝又 悠羽 Yu Takimata<br />
(アーツ&ルーツ専攻)</p>
<p>圧巻の展示。400枚の原稿用紙に1枚1枚何気ない400の風景を、物語を書くようにインクや水彩で軽やかに描かれている。作者は、人の生活の痕跡を感じる「今の私の視点で惹かれるもの」として、秋田に住まう身近な風景を捉えた。ただ風景の中に人がいない。しかし、人の気配を感じる愛しい絵だ。作者は意図して現場では描かず写真で風景を切り取り、それを自宅や大学で描くことで、不在の気配をより一層表す独自の表現手法を確立することに成功した。凛として静寂かつ切実で気配を感じる快作となった。</p>

    CNA秋田ケーブルテレビ特別賞 / 20×20

    滝又 悠羽 Yu Takimata
    (アーツ&ルーツ専攻)

    圧巻の展示。400枚の原稿用紙に1枚1枚何気ない400の風景を、物語を書くようにインクや水彩で軽やかに描かれている。作者は、人の生活の痕跡を感じる「今の私の視点で惹かれるもの」として、秋田に住まう身近な風景を捉えた。ただ風景の中に人がいない。しかし、人の気配を感じる愛しい絵だ。作者は意図して現場では描かず写真で風景を切り取り、それを自宅や大学で描くことで、不在の気配をより一層表す独自の表現手法を確立することに成功した。凛として静寂かつ切実で気配を感じる快作となった。

  • <p>あきびネット特別賞 / ep.5 高校生の私へ</p>
<p>田中 碧空 Sora Tanaka<br />
(ビジュアルアーツ専攻)</p>
<p>高校時代の部活動。専制的な監督の下で青春を過ごした作者は、心の深部に消えないダメージを受けた。今、大学4年間で獲得した表現力で武装し、この不条理な過去を克服するために取り組んだ成果が本作品である。鑑賞者は、文科省が定めた理想の部活動と作者の体験との宇宙的ギャップをテキストで示され、ユーモラスでありながらも戦慄を覚えるクイズや、現代アート的なメタファーを援用した映像で、作者の歪んだ部活動を追体験できる。そして、最後に掲示された「退部届」からは、切実な作者の思いに共感せざるを得ないだろう。身近な体験から日本社会に潜在する病理に迫った秀作である。</p>

    あきびネット特別賞 / ep.5 高校生の私へ

    田中 碧空 Sora Tanaka
    (ビジュアルアーツ専攻)

    高校時代の部活動。専制的な監督の下で青春を過ごした作者は、心の深部に消えないダメージを受けた。今、大学4年間で獲得した表現力で武装し、この不条理な過去を克服するために取り組んだ成果が本作品である。鑑賞者は、文科省が定めた理想の部活動と作者の体験との宇宙的ギャップをテキストで示され、ユーモラスでありながらも戦慄を覚えるクイズや、現代アート的なメタファーを援用した映像で、作者の歪んだ部活動を追体験できる。そして、最後に掲示された「退部届」からは、切実な作者の思いに共感せざるを得ないだろう。身近な体験から日本社会に潜在する病理に迫った秀作である。