英心
開催日:2019年2月11日
会場: 三種町 松庵寺
三種町の地域ゲストは、曹洞宗・松庵寺の僧侶で、ミュージシャンとしても活躍する英心氏。バンド「英心&The Meditationalies」などで、秋田を拠点に全国で音楽活動を展開している。この日は「旅」に因んで、仏教の精神に基づく自身の人生の旅について語った。講座終了後は、アコースティックライブを披露した。
1985年に松庵寺の長男として生まれた英心氏は、27歳で帰郷し、家業を継いだ。今は僧侶の仕事と並行して音楽活動を続けている。彼の音楽の根幹にあるのは、仏教の世界観であるという。
始めに、「人は自によらず他によらず、縁(えん)によってなる」「一切皆苦」、「人生は深い縁(えにし)の不思議な出会い」という釈迦の3つの言葉を紹介した。※
寺院に生まれた長男は、世襲するのが世の常だ。英心氏は10代でその体制に疑問を持ち、葛藤を感じ、パンクバンドを組んだという。「敷かれたレールから外れたい」一心で東京学芸大学に進学し、宗教社会学を学んだ。「大学時代はラテン音楽に夢中で。サンバとの出会いが自分の世界を広げるきっかけになった」。
卒業後は、修行で禅宗の大本山・永平寺へ。この時、作業中に寝たきりになる程の大事故にあった。「事故を経験して、初めてお坊さんとして生きたいという気持ちになった」と英心氏。修行後は、東京・東長寺の勤務を経て、サンバの聖地ブラジルの禅寺・佛心寺で布教活動を行った。
ブラジルでは、アマゾン川を下っていた時、満天に輝く星空に感動しながら「知足」を実感したという。「この言葉は、自分のパフォーマンスを最大限発揮しようという意味。今も楽曲を作る上で、重要なキーワードになっている」。
キューバでは、物質的には貧しくても現状を楽しくして生きる人々の姿が「知足」に繋がった。また、ジャマイカでは、「I&I(私は私、あなたも私)」という言葉に触れ、「縁起」にリンクしたという。
「憧れの終点が南米だった。現地の人のような音楽のグルーヴが出せないことに絶望したけれど、同時に自分自身のルーツについて自問する契機になった。私には仏教があり、お寺があり、秋田がある。それが見えてきた」と英心氏。自分に無いものを探すインプットの旅が教えてくれたのは「自分のルーツを見てみろよ」ということだったという。
[用語解説] ※英心氏の講義より
・「人は自によらず他によらず、縁によってなる」…全てはご縁の集合により、今の自分が出来上がるという「縁起」の考え。
・「一切皆苦」…我々には8つの苦しみが平等にある。この苦しみは、自分の心がつくっている。だからこそ諸行無常(常に物事は移り変わる)であり、諸法無我(私という存在はどこにも無い)であり、この世界をしっかりと受け止めようという教え。
・「人生は深い縁の不思議な出会い」…ご縁の連続が自分をつくる。深い縁は大いなる力「空」によって支えられている。
●アコースティックライブ
「英心&The Meditationalies」のアルバムより、「秋田濃厚民族」「過疎地の出来事」「Oi Bamba!」」「からっぽ」の4曲を、ギターの弾き語りで披露した。