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#レクチャー「集団で旅する」

#男鹿市

#小森はるか+瀬尾夏美

夏編 Lecture

小森 はるか + 瀬尾 夏美

 

開催日:20188月7日

会場: 男鹿市 ふるさと学習施設(旧加茂青砂小学校)

 

 

映像作家の小森はるか氏と画家で作家の瀬尾夏美氏は、震災の後、東北に移り住んで被災地に寄り添いながら創作活動を続けている。レクチャーでは、彼女たちが被災地の現実に向き合うようになった経緯について紹介。前日は、二人の映像作品「波のした、土のうえ」を受講者全員で鑑賞した。

会場の男鹿市加茂青砂地区は、1983年に日本海中部地震による大きな被害を受けた地域。当日は、津波犠牲者慰霊碑にも立ち寄った。

 

 

2011311日の東日本大震災発生当時、大学院生だった二人は「地続きの場所で何が起こっているのかを知りたい。それをしないと今後の作家活動ができないのではないか」との思いから、ボランティアとして被災地に向かった。

現地では、活動の軸となる人々との出会いがあり、それまで躊躇していた震災の記録作業を始めた。「自分たちには伝える役割があると感じた」と瀬尾氏。

 

 

やがて二人は、報道されない細やかな出来事に興味を持つようになったという。2012年からの3年間は、岩手県陸前高田市で暮らし、働きながら、風景や人々の言葉を記録する制作活動を続けた。瀬尾氏は、町の人たちが犠牲者を弔うために作った花畑について紹介した。「誰かを弔う行為が新しい風景を作り、しかもそこは過去と未来がつながる場になる。表現はこういうふうに始まるのかなと思った」。

 

映像作品「波のした、土のうえ」は、2014年に陸前高田で復興工事が始まってから制作された。「かつての面影を手放していく風景の中で、町の人たちが思い出せることを一緒に引き出すことから始めた」。瀬尾氏が聞き手になって一人称でテキストを書き、小森氏がその語り手に会いに行き、本人に朗読してもらった。この朗読を軸に、これまで小森氏が撮影した映像を組み合わせた。「震災を体験した当事者とそうでない人間が共同作業して作った作品で、もっと遠くの人が共有できるような場所、言葉、表現をつくることを目指した」と瀬尾氏。この作品は、展示会形式で被災経験のある地域から全国へ巡廻した。

 

2015年、二人は表現者として客観的な立場を維持するため、拠点を宮城県仙台市に移し、土地との協働を通じて記録を行うことを目的に「一般社団法人NOOK」を立ち上げた。そして、今でも東北の被災地に足を運びながら、制作活動を続けている。