旅する地域考archive

秋田で秋田と想ったこと

旅する地域考archive

#プレゼンテーション

#佐藤朋子

プレゼンテーション

佐藤 朋子

「かたるばかプロジェクト」

 

〈スライド発表、「蛍の光」音源を使用〉

 

 

大館市で出会った映画サークル(活動写真弁士)と私。秋田の内側からの視点と外からやって来た自分の視点で、二人の語り手が二重に語るプロジェクト。タイトル名は、秋田出身の舞踊家・石井獏が自らを称した「おどるばか」にちなんだ。

 

 

鉱山と活動写真弁士

 

映画が日本に輸入され始めた頃、活動写真弁士たちは、無声映画に独自の解釈で台本を書いたという。個別リサーチで訪れた大館市では、活動写真弁士たちや「黄金狂時代」の活弁台本に出会った。

大館市周辺には鉱山が複数あり、その台本を書いた弁士も鉱山街の出身だった。

鉱山の街では、鉱夫たちの娯楽施設として映画館があり、この映画もいち早く上映された。

 

 

「黄金狂時代」の構造と大館市の鉱山技師たちの重なるストーリー

 

チャップリンは金工を探しに山にいき、逃亡者と鉱山技師と出会う。彼らはチャップリンと同じく外からやってきた存在。一方、秋田でも、逃亡者と鉱山技師が外からやってきた。鉱山内は隠れ家であり、当時弾圧を受けた隠れキリシタンなどもいた。鉱山技師の多くはドイツから来た。

映画の中のチャップリンは、ある日、山を下り、一人のダンサーと出会う。私自身もまた、秋田県で二人のダンサーに出会った。石井獏と土方巽、それぞれゆかりの町には、石井のデスマスクと土方のデスフットが展示されており、青銅になった二人に会うことができた。

チャップリンは鉱夫には会わないが、私たちは鉱山の中で働く鉱夫の人形に会うことができる。坑道は暗く狭い。心霊スポットとしても有名になっている。

 

 

スコットランド民謡「蛍の光」

 

アメリカではクリスマスや大晦日に歌われているこの歌は、古き良き友人や、過去を振り返る歌。

チャップリンはこの曲を聴いて「黄金狂時代」を構想したという。

この曲はのちに「蛍の光」として日本に輸入され、勤勉に働き、未来に向けて勇む内容の歌詞が付けられた。今はもう歌われていない3番と4番があり、「国のために一つになって勇もう」という内容だった。戦時中に歌詞が変化し、日露戦争後は「台湾から樺太まで一つの国として勇もう」に。台湾から樺太までには中国と朝鮮があり、戦時中は多くの労働者が秋田に連れてこられた。1945年、大館市の共楽館では、労働力として酷使された中国人らが蜂起した「花岡事件」が起きた。事件現場にはその石碑が残っている。

 

 

 

プロジェクトの4つの柱

 

1) 現代においての「異物」を探す

鉱山は外から人やものがやってきて、ある種の異物が共存していた。それらを再考する。

 

2) 語りにくいものを「語り」「残す」

語りにくいことを語ること、そこに立つ存在、広義のパフォーマンスの残し方を再考することにつながるのではないか。

 

33つの軸から考える、語りにくいものを「語り」「残す」

 ・無形民俗文化財、石井や土方といった身体表現者たちの痕跡が残る秋田。

 ・閉山した鉱山で起きた事件やそこにいた人々の記録や痕跡。

 ・無声映画でシリアスと軽さを同時に表現したチャップリンの「黄金狂時代」。

 

4) 複数の視点からフィクションを立ち上げる

リサーチに基づきながら、「黄金狂う時代」の活弁台本を、フィクションとして共同制作し、フィクション度をさらに高めていく。

 

プロジェクト終了後は、実際の事件や過去、現在、異物などについて取材・リサーチを進め、どのように語ることができるのかを考えていく。そのときは、私自身をアーティストとして外から来た「異物」として進めたい。語りの発表が実現できたら、次はどう残していくかについて、弁士たちと一緒に考えたい。

 

 

当プロジェクト終了後、佐藤さんは、「NPO法人アーツセンターあきた」が運営する、秋田公立美術大学ギャラリー「BIYONG POINT」の展覧会企画公募に応募し、採用が決まった。「かたるばかプロジェクト」を発展させた作品は、2019年夏から、同ギャラリーにて上演と展示が予定されている。

 

佐藤 朋子「Double Narration / 鉱山と鉱石」

会期:2019年8月24日~11月4日(予定)

会場:秋田公立美術大学ギャラリー「BIYONG POINT」

お問い合わせ:アーツセンターあきた https://www.artscenter-akita.jp/