旅する地域考archive

秋田で秋田と想ったこと

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#プレゼンテーション

#小山渉

プレゼンテーション

小山 渉

「旅人がみる夢:迷い込む経験」

 

<冒頭から、平田篤胤とその「幽契」を教えてくれた友人(君)へ電話をかけ、通話という形で語りだす

パフォーマンスタイプの発表>

 

 

 

もしもし?ちょっと僕の秋田での旅の話を聞いてもらってもいいかな。

 

…僕は秋田の旅の前に君に会った。君は神道を学んでいて、秋田出身の国学者平田篤胤の「幽契(ゆうけい)」というエピソードを教えてくれたよね。

 

【平田篤胤「幽契」というエピソードの中に、平田が本居宣長を狂信的に信奉していて、本居が亡くなった後に訪ねていき、夢の中で弟子入りするという逸話がある。幽契とは、目に見えない神仏との約束を意味する。】

 

今思えば、僕の秋田への旅はここから始まっていた。

僕が秋田の旅で最初に教わったレクチャーは人類学だった。神話的世界をすごく身近に感じて、自然と「幽契」を思い出し、平田篤胤について関心が湧いて君に連絡を取った。

旅の間君はずっとレクチャーをしてくれて、でも君は話しだすと止まらないから、メールも平気で100通くらい、また100通、また100通と送られてきたよね。

 

そのおかげで平田篤胤について、とても勉強になったんだけれども。

秋田で平田にまつわることを君に言われて見てみたりした。さまざまな死生観を見て回り、鉱山や信仰があった場所にも行ったけれど、君のレクチャーを聞いていたことで、現地で得ている経験よりも、明らかに平田篤胤の情報が上回っていて。秋田で得た実際の経験より、東京からくる平田篤胤の情報で上書きされていて、秋田では平田にまつわる経験をしていたような錯覚を覚えている。秋田は僕にとって、夢の世界のような感覚があった。もちろん何も感じなかった訳じゃないけれど、そんな感覚があった。

 

〈会話が続く〉

 

「幽契」と「夢幻能」についての報告なんだけど、旅の経験では、平田の「幽契」の場面とよく似ている、一種の「夢幻能」と言われる構造を思い起こした。「夢幻能」というのは、諸国を巡る旅の僧が見る夢の世界を舞台で演じ、観客はその夢の世界を垣間見る。その夢の中では、神仏だったり鬼だったり幽霊という見えない存在と旅人が対話する。それは舞台上で演じられていた。

 

僕が秋田で体験した中で、これからやってみようと思うのは、ある種迷い込んだようなもの。夢か現(うつつ)か、神話的世界に迷い込んだような感じ。

この旅は、僕と君の間では終わってないと思うんだよね。全然しゃべらないね?まあいいや。

旅を語るときに、やめるのか終わるのか、時間軸をいじることができるというような話を昨日聞いていた。僕は旅を続けてもいい、このまま迷い続けるというプランニングもありだなと思い始めた。

基本的には昨日のプランニングとあまり変わらないんだけれど。

君は何をいっても神話に伏線回収するよね。神道自体、何を言っても神話につながる。

あらゆること、山だとか村だとか、人間でもあらゆることが神話に回収されるということで、平田篤胤の出生の地の秋田じゃないと君は乗らないかもしれないので、秋田を神話的な世界で蘇らせる。平田篤胤の死生観をアップデートするという文脈でやってみる。文脈にのっとるのであれば、現代の死生観を考える旅にしたい。

現代の死生観を更新していく。神話的世界を君が語ることによって現実とのズレが生まれる。

 

〈しばし電話口の声に相槌を打つ〉

 

つまり現実との乖離(かいり)みたいなものだよね。ということで、僕のプレゼンは終わらせてもらいます。じゃあね。

 

〈電話を切る〉