「旅する地域考」の特徴のひとつは、参加者とともに国内外から集まるメンターたちも一緒に旅をすること。訪れる先々で行うレクチャーのみならず、なんといってもおしゃべりする時間がたっぷりと用意されています。夏編の旅でみなさんの創作や企画をサポートするメンターたちを一人ずつご紹介します。
04 フィリップ・バルド Philippe Barde
フィリップ・バルドさんは、スイスのジュネーブに活動拠点を持つ陶芸家。陶芸といえば、ひとつの産地や風土に密に関わってものづくりに向き合うイメージが強いものの、バルドさんは、世界を旅する陶芸家。日本、中国、アメリカ、キューバにスリランカ…過去26年間で21カ国に招かれ、滞在制作や各地の土を採取して作陶を続けています。
バルドさんによると、石の中には長い歴史や地質など、たくさんの情報が詰め込まれているとのこと。土ではなく山の石を自ら拾い、窯焚きして作品化させた「Stolen Stones」シリーズでは、セラミックで表現可能な領域を次の次元へと広げています。
また、バルドさんは、1998年より京都造形芸術大学教授で陶芸家の松井利夫さんと一緒に研究活動を続けています。二人の名前の頭文字をとった「PTプロジェクト」では、それぞれの作品の半型を合体させてひとつの器を作るほか、世界各地で共同展示を開催。陶芸がその原初的な営みに立ち返ることで、今日の個を中心としたアートのあり方への疑問とその限界を超える提案を行っています。
温泉、鉱山、地熱発電所などがある鹿角市は、はるか昔から地質の豊かさがが人々の生活を支えてきた地域。「辺境を掘る夏編」では、陶芸家のバルドさんの視点から見つめる土地の魅力や、ものづくりに携わる人たちに向けてのアドバイスをたっぷりいただけることを期待しています。
●参考 フィリップ・バルドさん作品(Alfred Ceramics/英語)
http://www.alfredceramics.com/phillip-bard.html
●参考 PTプロジェクト(波佐見町立ソトガワ美術館)