町山智浩
2020.10.7
本プログラム最後のレクチャーとして、社会事情をグローバルな視点で考察する映画評論家でコラムニストの町山智浩が、アメリカから始まった「Black Lives Matter」(以下、BLM)について解説した。BLMは、白人警官の取り締まりで黒人が命を奪われる事件に対する人種差別抗議運動。アメリカでは過去に何度も繰り返されてきた。2020年5月、ミネアポリスで起きた「ジョージ・フロイド事件」の後、ムーブメントは全米から世界に飛び火した。
町山は、近隣の警察署前で撮影したデモの映像を見せ、「日本ではBLMの実情がきちんと報道されていない」と語った。BLMを過激派の暴動と勘違いする人は少なくない。しかし、映像ではさまざまな人種が結束して平和と正義を訴えていた。「警察への抗議デモは警察署に行く。商店を破壊したり略奪したりしている人たちはデモに便乗しているだけ」と指摘。
80年代以降、黒人の犯罪率は大幅に減少している。それでも事件が後を絶たない理由には、警察組織や大陪審の問題なども絡む。「無実や軽犯罪の黒人が命を落とすケースで、白人警官が有罪になる割合は、わずか1%」と町山。モニターに並ぶ受講生たちの目が丸くなった。BLMで市民が求めるものに、警察の再編成がある。911以降は、対テロ訓練が重視されてきたが、「地域を守る警察をつくってほしい」という声が高まっている。モデレーターの岩井成昭は「地域を支える柱として、秩序を誰が保つのかという大きな問いを与えられた」と最後にまとめた。
町山智浩
Tomohiro Machiyama
映画評論家、コラムニスト
1962年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。雑誌「映画秘宝」創刊後、97年渡米。現在カリフォルニア州在住。著書に『トラウマ映画館』『ブレードランナーの未来世紀』『最も危険なアメリカ映画』など。BS朝日『町山智浩のアメリカの今を知るTV』放送中。