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Lecture 01

ステファニー・ガウス

 

2020.9.20

 

 

映像作家のステファニー・ガウスは2018年、大潟村を舞台に映像作品を撮影した。彼女は、オランダの干拓事業のリサーチを通じて、大潟村の存在を知ったという。「大潟村の事例に学ぶ:モデル農村での生活風景」と題したレクチャーでは、制作プロセスを解説し、村の事例から地域社会を考察した。

 

秋田県大潟村は1964年、オランダをモデルとする国家事業により八郎潟の干拓地に新設された。戦後の食糧不足解消のため、米の大規模機械化農業の実験場として全国から入植者を募り、計画的につくられた村。

ガウスの作品は、農地・住居・インフラ・議会など、大潟村の全体図を描くように淡々と映し出す映像と住民たちの声で構成される。住宅計画、移住者の衝突、減反政策による政府と村の対立、長年続いた分断の歴史にも触れながら、理想と現実の間で生きる人々の生活の様相を綴っている。「政治的なメッセージとともに、住民たちの新たな個性の表出を捉えようとした」。

 

「大潟村のように新しい村をつくるなら、どのように設計したいですか?」とガウス。気候変動による災害が世界で拡大する時代において、この問いは、人々やコミュニティ全体を移住せざるを得ない状況を伴う現代の社会課題にも繋がってくる。「我々の未来にあるのは、過去なのだ」。ガウスは大潟村の事例を通じて「再演・事前上演」という比喩で、物事を別の視点から思考するアイデアを提示した。

 

 

※ガウスの作品について……今和次郎による考現学のスケッチを筆頭に、小川紳介(映像作家)、Joris Ivens(映像作家)、秋田で大潟村の変遷を研究したDonald C.Wood(文化人類学者)などから影響を受けている。大潟村の長編作品の公開時期は未定。

 

※再演・事前上演……ここでの「再演」は、過去の出来事が再び繰り返されること。「事前上演」は、将来起こりうる出来事を想像すること。美学的な空間の概念やさまざまな時間軸を織り込んだ見方により、特別な瞬間を捉えることを意味する。

 

 

 

ステファニー・ガウス

Stefanie Gaus

映画監督

ドイツ・ベルリンを拠点に活動する映像作家。プラハのFAMUフィルムアカデミーで学び始め、ケルンのメディア芸術アカデミーを卒業。2007年から19年まで、ベルリン芸術大学でナラティブ・フィルムの分野で芸術助手として教鞭をとる。政治的、社会文化的な影響への関心と、空間的、建築的な次元への独特の視点が、芸術的実践と映画の基礎となっている。作品は、ブエノスアイレス、バンクーバーをはじめとする国際映画祭のほか、ベルリン市内上映されている。

また、映像作家/作家のフォルカー・サッテルとのコラボレーション作品『Beyond Metabolism』(2014)は、京都のゲーテ・インスティテュート鴨川荘でのレジデンス期間中に制作され、ベルリン映画祭でプレミア上映された。2017年、ベルリンのKulturraum Zwingliで映画プログラム「Cinema+(映画+対話+カルトブランシュ)」を開始。空間の中で展開し、イザベル・スペングラー、リリ・クシェール、ソーニャ・シェーンベルガーとのコラボレーションによるアートプログラム「Korrespondenzen」(2019年)となる。

現在、秋田県大潟村を舞台に制作した作品の完成が控えている。