archive
INSTAGRAM FACEBOOK MAIL
参加エントリーフォーム
Close

Close

Lecture 02

呉屋淳子

 

2020.9.27

 

 

文化人類学者の呉屋淳子による「身体表現から“地域”を捉える―ローカル・ナショナル・グローバルな身体―」。呉屋は沖縄・北谷のライブハウスからレクチャーを行い、朝鮮半島や沖縄で継承される民俗芸能におけるアイデンティティや表現について考察した。

 

朝鮮半島編では、伝統音楽「国楽」をポップスに昇華させ、グローバルな視点で活躍するアーティスト「イ・ナルチ」「SsingSsing」を紹介。彼らの登場から、朝鮮半島の伝統音楽は変わりつつあるという。「SsingSsing」ボーカルで、京畿民謡の担い手でもあるイ・ヒムンは、独特なファッションで、民謡に現代的な解釈を加えてパフォーマンスする異色の歌手。「伝統は変わらないが、表現は時代によって変わらなければならない」。「私はただ誰かと違うだけ」と、100年先の継承を見据え、今を生きる彼のことばを引用した。

 

沖縄編では、「歌と踊りの島」八重山諸島の伝統芸能について。八重山では、郷土芸能部で活動する高校生が、地域の人々とともに伝統芸能継承の一翼を担っているとのこと。「沖縄県代表として全国大会で演舞する際は、ナショナルのアイデンティティが育まれる。しかし、ローカルは沖縄島ではなく八重山にある。パーソナルがローカルと密に繋がり、彼らの表現を生み出している」。

 

レクチャーには「りんけんバンド」の照屋林賢がサプライズで登場。「生まれた場所のことばで音楽を表現したかった。地域を掘り下げるほどに、“新しい音楽”として世界に広がった」と語った。「ローカル・ナショナル・グローバルという視点に立ち、地域やそこで育まれる芸能を見ていくと、新しい表現を生み出す環境や行為について、より深く知ることができるのでは」と呉屋。地域を考察する糸口のほか、沖縄の風景や初めて触れる踊りや音楽を共有して「旅をするような時間」をともに過ごした。

 

※りんけんバンド……1977年沖縄で結成。沖縄のことばや伝統楽器を現代音楽と融合させた「沖縄ポップ」を生み出すバンド。国内外で高く評価されている。

 

 

呉屋淳子

Junko Goya

文化人類学者

1978年生まれ。沖縄県立芸術大学音楽学部准教授。専門は文化人類学。民俗芸能を創造する「場」としての学校に着目し、朝鮮半島、南西諸島、そして東北地方において調査研究に従事している。
近年は、地域のなかで育まれてきた芸能の持続可能な継承のあり方を、地域の人びとや行政、学校の関係者と共に考え、語り合い、学び合うためのプロジェクト「今を生きる人々と育む地域芸能の未来―「保存」から「持続可能性」への転換を志向する場の形成と人材育成」(大学における文化芸術推進事業)の企画・運営を行っている。
著書に『「学校芸能」の民族誌-創造される八重山芸能』森話社(2017)、「被災地からみる民俗芸能の未来−『子ども神楽』の誕生とその活動から考える」高倉浩樹・山口睦編『震災後の地域文化と被災地の民俗誌』新泉社(2017)、「伝統芸能の<担い手>とは誰か」三島わかな・久万田晋編『沖縄芸能のダイナミズム―創造・表象・越境』七月社(2020)がある。