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Lecture 03

菊地晃生

 

2020.10.4

 

 

農業を営む菊地晃生は、地元・秋田からのゲスト。2007年に帰郷して祖父の田畑を受け継ぎ、潟上市で「ファームガーデンたそがれ」を立ち上げ、今年で12年目を迎える。化学合成肥料に頼らない不耕起栽培による米・野菜づくりと加工販売を手がけ、「新しい農のかたち」を独自に切り拓いている。

「私たちが食べているものは、どのように作られているのかが見えにくい。自分が思い描く営農を具現化しようと、ランドスケーププランニングの視点を織りまぜ起業した」。1年で慣行栽培をやめ、自然に委ねた営農を開始。「たそがれ」では、田畑に集まるたくさんの生き物も豊かさの指標となっている。

 

菊地の視点は小さな「種」にも。一代交配で毎年購入が必要な「F1種」が農家の主流だが、菊地は土地で代々守り継がれる「固定種」を自家採取している。「米も野菜も、採れる種は自分の手で繋いでいきたい」。「沼山大根」の取り組みでは、産地「沼山」の解釈を秋田県内に拡げて種を引き継ぎ、2017年に幻の品種を復活させた。

 

「暮らしそのもののデザインを、百姓の立場から考えている」と菊地。子育てもその一環。自分の子どもを保育園に預けるのをやめ、仕事場=自然の中で過ごし、親子で学び合う「たそがれ野育園」を始めた。8年前からは「子どもから大人まで誰でも農体験・自給体験ができる場」として開かれ、今ではたくさんの家族と環境をシェアしている。「競争社会だった戦後の近代農業とは別の役割を担いはじめている。所有から共有へ。未来に持続させるには、地縁・血縁を超えて、コミュニティを再考する必要がある」と語った。

 

 

※F1種について……「メンデルの法則」に基づき、異なる形質を持つ親をかけ合わせると、その第一代の子(F1=雑種第一代)には優性遺伝子だけが発現し、野菜の形が均一に作られる。これを維持するには、毎年F1種を購入し、同じ組み合わせでの交配が必要となる。

 

※沼山大根……秋田県横手市沼山地区で栽培されてきた地大根。2014年に栽培が途絶えたが、菊地と仲間の3人で希少な種を引き継ぎ、2017年に復活させた。青首でしっかりとした歯ごたえが特徴。

 

 

 

菊地晃生

Kousei Kikuchi

農民

1979年秋田県生まれ。2004年豊橋技術科学大学大学院修了。名工大・大学院を経て、2005-2007年高野ランドスケーププランニング株式会社。2008年帰農。農薬・化学肥料を使わない栽培を目指し、自然栽培を実践・自主販売を始める。

「ファームガーデンたそがれ」として、水稲のほか大豆、小麦、枝豆など約150品種を栽培。

また「たそがれ野育園」として、農的暮らしの学び場を主催している。

●ファームガーデンたそがれ http://tasogare.akita.jp/