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Lecture & Workshop 02

手塚夏子

 

2020.9.26

ワークショップ

 

 

第2週のテーマは「身体を通してみる地域」「身体を地域として考えられるのか」。ベルリン在住のコンテンポラリー・ダンサー手塚夏子が実験的なワークショップを担当した。はじめに、「身体の一部分に意識を集中させる」ワークでウォーミングアップ。受講生は目を閉じ、自身の身体反応を観察した。続いて、呼吸や距離にも意識を向け、徐々に感覚を研ぎ澄ませた。

 

「手の中にモノを握り、その触感を他者に伝える」というワークでは、あらかじめ個々に「秘密のアイテム」を送っていた。「触感の倍率を3段階に上げて説明してほしい。全体像が見えなくなると、違うものが見えてくるはず」と手塚。また、アイマスクを装着して「地域を連想させることばを聴く」ワークでは、別の場所や記憶を共有し、「イメージの中の旅」を試みた。

 

とあるワークでは「少し不安を覚え、自分の感情を抑えるのに必死だった」と語る受講生もいた。手塚は「反応する身体をテーマにした実験を作る」という宿題を提示。「自分が被検体になった時にどう感じるかを想像し、最低限、相手に暴力的に作用し過ぎないよう考慮してほしい」と念を押した。

 

※秘密のアイテム……手塚夏子が選び、「タビコウキット」として受講生に送ったもの。消しゴム、ビー玉、耳栓、クギ、鉛筆、鉛筆キャップ、木のボタン、王冠、外国のコイン、サイコロ、ドングリ。

 

 

 

2020.9.27

ワークショップ・レクチャー

 

宿題「反応する身体をテーマにした実験」の発表からスタート。「実験は自分の知りたいことを明確にしたり、新たな問いを生んだりする」。手塚を含む全員が被験体となり、11の実験に挑戦した。考案された実験は「まばたきと脈のリズム隊に分かれ、声の合奏をする」(青木)「映像をオフにして丸裸になり、別の相手に対する印象を伝える」(MAM!KO)「被験者はマスクを着用。ノーマスクで激しく咳込む姿を見続け、心の反応を確認する」(中嶋)など。身体性の追求やリモートの特性を取り込んだものまで内容はさまざま。

 

後半のレクチャーは、手塚のライフワークでもある民俗芸能調査と作品『私的解剖実験6-虚像からの旅立ち』について。「近代化により、個人というコンセプトが植え付けられた現代において、私たちは今起きていることに身体で反応できているのだろうか」「それぞれが反応する体を取り戻し、互いに反応し合う関係性が生まれることで、初めて人と人の“間”から立ち上がる自分自身の役割を取り戻せるのではないか」。過去から続く時間軸の中にあり、自身の内発性を担保する“間”から生じる力について話し合った。

 

個々の感覚を開き、身体や意識、無意識と対峙する、親密な2日間となった。手塚と受講生は後日、互いの感想をテキストで改めて共有した。

 

 

 

手塚 夏子

Natsuko Tezuka

ダンサー、振付家

神奈川県横浜市に生まれる。1995 年より、マイムからダンスへと移行しつつ、既成のテクニックではないスタイルの試行錯誤をテーマに活動を続ける。2001 年より自身の体を観察する『私的解剖実験シリーズ』始動。同年、『私的解剖実験 -2』をトヨタコレオグラフィーファイナリストとして上演。独自の手法でコンテンポラリーダンスに取り組むアーティストと対話をし、彼らの手法について思考し体で試行する「道場破り」など、自主企画も多数。国の枠組みを疑って民俗芸能を観察する試みである「Asia Interactive Research」(2010-2016)、スリランカのVenuri Pereraと韓国のSuh YeongRanとともに、アジアにとって西洋近代化とは何だったのか?という問いに向き合う「Floating Bottle Project」(2016-)などを立ち上げ、国内外でパフォーマンスを展開。20184月からベルリンでのダンス活動を開始した。