青木理佳
旅するように、その地で生きる
東京で生まれ育ち、1年半前に転勤で秋田に移った私は、一方でここでの生活も折り返しに近づいているかもしれないという状況のもと、タビコウを機にある問いにあたった。
「私は今、旅をしているのか?」。
期間中、さまざまな体験のなかで思いを巡らすと、この土地にいる自分が二面性のなかを揺れ動くさまが浮かび上がってきた。地域で暮らしを営む「旅でない日常」と、限りある時間でそこにあるものを目一杯吸収しようとする「旅の途中」。そこで、「旅をするようにその地域で日常を生きる」さまを〈旅〉と定義したうえで、自分の身体で経験してきた秋田での〈旅〉の実感を持って他者に伝えるため、3つの食をめぐる体験を短い文章でまとめ提示した。
●最終発表資料
仕事の都合上、期限付きで秋田に暮らしている青木は、〈旅〉の視点で、現在の生活を考察した。地域ではよそ者であるという立場を自覚する一方、一時的な「旅先での過ごし方」と捉えることで日々の豊かさの際立ちを感じられるようになったという。
発表では、秋田で強く記憶に刻まれた3つの食(だだみ、山菜、新米)の体験を文章化。「考え方を変えると、どの土地にいても、旅先での過ごし方は成立するのかもしれない。いつかここを離れる時も、秋田の食と記憶を取り込んだ身体があるから、寂しい思いをせずに次の地へ移れるという実感を手に入れた」。
青木理佳(秋田)
Rika Aoki
システムエンジニア
東京都出身。学生時代までを都内で過ごす。大学では日本語学・日本文学を研究。2019年に文学部国文学専攻を卒業後、民間の通信会社へ入社し、配属に伴い秋田県へ移り住む。業務においてはシステムエンジニアとして通信ネットワークの構築・運用保守に従事するほか、社内の地域活性化に向けたプロジェクトチームで活動中。