稲村行真
「第3の未知」への旅、地域が集った痕跡を探し歩く
今まで世界中を旅して、辺境や過去といった現在地から遠い文化圏を身体的に求めてきました。しかし、近年は行き尽くした実感がある上、コロナ禍では新しい旅を模索しなければなりません。そこで見えざる領域「第3の未知」への旅を考えました。土地の上に作られた建物や道路などは上書き保存され続ける一方で、神社の敷地や御神木は地域の精神的支柱として残り続け、人々の想像を掻き立てます。まずは近所の神社を調査した結果、石造物等から「地域が集った痕跡」が見られ、秋田のカシマサマとも接続する鹿島信仰の存在を確認しました。この体験をもとに、自宅(千葉)から秋田までの約450kmを2週間で歩き、地域を再発見して写真や文章で記録する旅を考案。来春までに実施を予定しています。
●最終発表資料
/tabikou2020summer/wp-content/uploads/2020/11/s旅する地域考・最終プレゼンテーション.pdf
「旅は未知への好奇心に対する衝動」と語る稲村は、「10のタスク」のひとつ「住み慣れた町で迷子になる」で地域の寺社仏閣を巡り、自身の関心を再確認した。その結果、「ふと、千葉の自宅から秋田までの456㎞を歩きたくなった」と、「コロナ禍のこれからの旅」を提案。新幹線で約2時間の道程を、江戸時代の先人たちにならって2週間かけて歩き、記録を綴る計画だ。「過去に向かうことで新しい未知に出会いたい」。日程、予算、持ち物まで綿密にプランを立てた。効率的な日常を求められる現代において「非日常的な無駄を創出」するための準備を進めている。
稲村行真(千葉)
Yukimasa Inamura
フォトグラファー・ライター
1994年生まれ。中央大学法学部卒業。古民家活用事業を行ったのち、石川県加賀市の獅子舞を撮影して写真作品を制作する「KAGA SHISHIMAI project」(2019年~現在)を開始。「東京~石川 500km徒歩」(2017,19年)などの徒歩旅も実施している。直近では台湾などのアジア圏でも、歩くプロジェクトを展開。未知への好奇心とともに、様々な土地を歩いている。