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Report 08

増子博子

 

岩手の熊彫

 

『くまんげん』 2020×1350mm   箔合紙、チャコール

 

2020年春、私は岩手県葛巻町での生活を始めました。そこで読んだ郷土史の中で、“昔、この町に北海道土産である熊彫を作って北海道へ売っていた人がいた”ということを知りました。

そこで最初に浮かんだ問いは、「東北で彫られた熊彫は、ヒグマをモデルにしていても、ツキノワグマに似てしまうのではないか?」というものでした。そこで町の人々に聞き込みを始め、葛巻で熊彫を作っていた上高山兼太郎(1926-1989)にたどり着きます。彼の娘さんから話を聞いたり、実際に制作された熊彫を見せて頂いたり彫痕を触ったりしながら、北海道と岩手を繋いだ岩手生まれの熊彫について考えていくことになります。

 

 

増子が暮らす葛巻町は、野生動物が身近に生息する自然豊かな地域。地元出身の熊彫作家・上高山兼太郎の存在を知り、地域で「熊彫り」を紐解く取材と制作を行った。上高山の熊彫を手で触り、「毛皮を剥ぐような」感覚で、彫り跡を紙に写し取った大型作品『くまんげん』ほか、木彫りやドローイングによる「熊地図」を制作。「この旅に参加しなければ、触る行為に行き着かなかった。少し前までは熊を怖れていたのに、自分の中に熊が生まれたような気がした」。

増子は、今後も地域の人たちと対話を続けながら、自身の制作を深めていく予定だ。

 

上高山兼太郎の熊彫

 

熊彫を触る

 

 

増子博子(岩手)

Hiroko Masuko

美術家、絵描き

宮城県生まれ、岩手県在住。住む土地土地で「出逢ってしまうもの」と共に考えることを続けている。彼らに突き動かされ手を動かしていく。盆栽をテーマにした作品、日々のドローイング「側(カワ)の器」も継続して制作している。

web https://www.bonsa1.org/