リサーチノート 01
「旅する地域考 辺境を酌む 冬編」の実施に向けて、旅考の運営メンバーは、次の旅先となるにかほ市と由利本荘市を事前に訪れ、リサーチを続けています。さて、この冬は、どんな場所にみなさんをお連れするのか。どんな体験ができるのか。現地で見つけたことや、感じたことを少しずつご紹介していきます。
湧水点は突然に
発酵中のもろみをかき混ぜない酒造りに挑む、由利本荘市の「齋彌酒造店」を見学した帰り途にて。
「出羽富士」とも呼ばれる鳥海山は、約60万年前から何千回と噴火を繰り返し、そのたびに噴出した溶岩の層がバームクーヘンのように重なっている。
2,236メートル超えの頂から美しく延びる山体に蓄えられる大量の水は、地層を潜り、その末端部の至るところから湧き出る。だから有名な滝や湧水スポットのみならず、つい見落としそうな道端にも注意したい。
この水はどこを辿り、何を複合して来たのだろう?
ある企画や表現も、たった一つの原因から立ち上がることはまず無いだろう。
数々の要因が、潜在的かつ複雑に分岐、合流し、ときに思いも寄らない場所から顔を出し、結果に影響を与える。
大事なことは、それが不意に現れた時、いつでも酌み取れるよう準備することだ。
文・写真/小熊隆博(ファシリテーター)