旅する地域考 2019夏編 未知の日常から、新たな問いと発見を生み出す。

旅する地域考 2020冬編 未知の日常から、新たな問いと発見を生み出す。

Tabiko News タビコウニュース

冬編レポート

DAY5

2020.1.12

 

「辺境を酌む冬編」、現場に同行したスタッフによるレポートをお届けします。

 

 

海苔漁と海苔干し

 

旅する地域考5日目の1月12日。今日のセッションが終わったら本当にみんなで動き回るのは最後だね、と惜しむ声が聞こえた。

みんなを乗せたバスが向かったのは、にかほ市象潟町小砂川の海。バスを降りると、天気の良い朝と波の音があった。そのごつごつとした岩場から、漁師の浅倉智さんは現れた。

 

どんどん先へ進んでいく浅倉さんに続き、私たちも不安定な足場を歩いてゆく。岩はどっしりとして、体重をかけても全く揺れ動かない。私たちは次の足の出し方を模索してぐらぐらする。やがて、浅倉さんが立ち止まる。レクチャーが始まった。

浅倉さんの足元の岩肌は、細かな海苔が付着して、毛の生えた動物の背中のようだった。赤い色の柄をした小さなハサミで、海苔を刈り取った。

 

浅倉さんのご自宅の前には大型バケツが3つとホースが出してあった。バケツいっぱいに入れた水道水に、海苔の入った大きなざるを浸けて、勢いよく手で掻き回した。海苔からはたくさん砂が出た。濁った水をその場に流した。家の前が湖になり、すぐに水は住宅地の坂道を下っていった。それを、砂が出なくなるまで繰り返した。

 

別の水の上に海苔簀(すのこ)を浮かべた。この簀の上に木枠の型を載せ、洗った海苔を敷いてゆく。乾いたときに穴が開かないよう、パチパチと叩いて厚さのムラをならした。

均等に敷き終わると、木枠を垂直に持ち上げて外した。海苔が四角になって簀に載っていた。これが縮んで乾くことで1枚の食品の海苔になる。漁師はこの作業を「海苔干し」と呼んで、毎冬の仕事としてきた。

 

冬にしか採れないのだそうだ。刈ることができずに残った海苔は、春になったら全部死んで苔になってしまうらしい。「海苔」とは言い得て妙だ。

 

文・写真/塚本 葵(編集班)

 

 

2020.1.12旅程

8:00|小砂川海岸 岩海苔収穫体験、小砂川漁港フィールドワーク

9:00|浅倉智邸 海苔づくりワークショップ

10:00|象潟公会堂 原万希子レクチャー
11:00|象潟公会堂 高嶺格レクチャー

13:00|象潟公会堂ほか 個別リサーチ、制作、メンタリングセッション

17:00|象潟公会堂 ポール・アグスタ映画上映会

18:30|象潟公会堂 全体ミーティング

 

 

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